◆日時 2012年3月3日(土)14時〜16時
◆場所 主婦連合会会議室(主婦会館3階)
千代田区六番町15(JR四ッ谷駅前)
◆講師 阿部 哲也さん
◆参加費 無料
昨年は、東日本大震災、そして、レベル7という大規模な原子力発電所事故により、消費者すべての心に、将来にわたる不安感を植えつけました。安心・安全を崩壊させた放射性物質の汚染問題は今後数十年にわたり、食品・環境をはじめ、消費生活に大きな影響を及ぼし続けます。
福島県で果樹園を営んでいる阿部哲也さんをお迎えし、農家の立場から被災地では「食品の放射能汚染」問題をどう考えているか、また、東電への賠償請求の取り組みなどについて熱く語っていただきます。
私の勤務する大学のゼミ生が「マイボトルの普及を目指して」というテーマで共同研究を行った。近年、ステンレス魔法瓶の出荷量は急速に増えているが、さらなる普及を進めるにはどうすればよいかという問題を考察した。
まず、大学生に対するアンケート調査では、男性127人、女性39人のうち、マイボトルを使っている男子学生は18%、女子学生は46%であり、使用している理由は「節約になる」「飲みたいときに飲める」「おしゃれ」「環境に良い」という順であった。今日の経済不況が、学生生活に影響を及ぼしていることが読み取れるが、実際、ペットボトルの購入量は、マイボトル使用者で週に平均1.5本、マイボトル非使用者で平均3.8本となっており、マイボトル使用者は節約志向が強い。一方、マイボトルの不満点は「かさばる」「重い」「洗うのが面倒」という順。そこで、飲料水を自動販売機などで購入できればというわけで、既に京都市役所のエコ・コンビニで導入され、また、ファミレスにあるドリンクバー方式であるディスペンサーを利用し、価格を安くすれば(例えば、250mlで50円程)利用したいという回答は65%に上った。
さて、アンケート結果からは女子学生のマイボトル利用者が多いが、マイボトルを利用することによってペットボトルの購入を節約できる金額は、1本150円として、年間1万6,425円にもなる。さらに、わが大学の全学生は約2万8,000人であるから、ディスペンサー利用希望者の65%がマイボトラーとなったとすれば、1年間のCO₂削減量は、実に374トンの削減になる。
従業員の44.2%が職場にマイボトルを持参しているミツカングループ本社のように、オフィスでのマイボトルの利用を増やし、ディズニーのスーベニアカップとしてマイボトルのデザインを企画するとか、ディスペンサーを利用できるコンビニを増やすことによって、マイボトルが普及するのではというのが、学生の提言であった。
2009年8月30日の衆議院総選挙で、自民・公明連立政権が大敗、民主党が大躍進をし,政権交代が実現した。総選挙ではマニフェストが大きな役割を演じたが、民主党のマニフェストでは、国造りの骨格を変え、官僚主導から政府主導へと舵を切り変えることが強調された。戦後、長く続いた自民党と官僚との協調体制から、民主党は官僚主導の流れを変え、財政の無駄を省くとともに、産業から国民生活を優先する政策に変えることになった。
さて、今後の民主党の環境政策はどうなるだろうか。地球温暖化政策では、民主党は温室効果ガスを2020年度に、1990年度比で25%削減するとしている。前政権が2020年度の目標値を、2005年度比で15%減としたのであるから、これは大幅な削減というべきであろう。このためには、排出量取引や地球温暖化税(炭素税)の導入、そして、固定価格買い入れ制度による太陽光発電をはじめとする自然エネルギー、省エネルギーの助成を行うという。排出量取引や炭素税の導入は、わが国の産業界が反対していたので、これまでは省エネ住宅、エコカー、太陽光導入という消費者サイドの政策が主だったが、一次的には産業界がまず財政的な負担をする政策に切り変えられるかも知れない。しかし、グローバル経済で激しい競争に直面している産業界の同意がないと、結局は海外から大規模に排出量を買い入れ、また、原発を増設しなければならないといった状況に追い込まれないとも限らない。
もう一つの問題は、ガソリン税の暫定税率の廃止と高速道路料金の無料化である。この政策は国民の生活コスト引き下げ、地域の活性化を目指したものであり、従来の高速道路政策の大転換をもたらすものであるが、それに伴う財政支出増加の可能性と正当性を議論し、また、自動車交通の混雑化に伴う大気汚染や二酸化炭素排出がどの程度増えるかを検証し、そして、高速道路建設から総合交通政策への転換を促し、自動車代替交通への影響や新たな走行距離に対応する課税制度(キロメートル・チャージ)の導入などを検討すべきであろう。今後の民主党の環境政策に注目したい。
地球温暖化問題が、われわれの食生活のあり方に課題を投げかけている。たとえば、寿司1人前のフード・マイレージは、地球2.7周分に当たると聞けば、多くの人が驚くだろう。しかし、いわし、真鯛、ホタテなどの国内産を除くと、さばはノルウェー、数の子はカナダ、たこはモーリタニアなどから輸入されており、全体の距離数は106,600kmにも及んでいる。輸送距離が長いということは、当然、エネルギー消費量と二酸化炭素の排出量が高いということを意味する。食生活と地球温暖化については、近年、フード・マイレージやフード・マイルという名前で計算され、注目を浴びるようになった。
フード・マイレージは食料の自給率にポイントをおいたもので、今日、農水産物はグローバル化しているが、このグローバル化に合わせて農水産物輸送のエネルギー消費量を計算するものである。実際、わが国の食料自給率はカロリーベースで約40%に過ぎず、輸送距離に食料輸送量を掛け合わせたフード・マイレージ(トン・キロメートル)は、2001年度で9002億トン・キロとなっており、これは韓国やアメリカ合衆国の3倍、ドイツやイギリスの4〜5倍となっており、食料の海外依存度の高さにほぼ比例している。わが国のフード・マイレージが高いのは、特に、輸入農産物の中で小麦などの穀物や大豆などの油糧種子のウェイトが高い(全体の72%)こと、食料輸入国がアメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアに集中している(3カ国で全体の76%)ことが要因となっている。フード・マイレージを減らすには、食料輸入量を減らさなくてはならない。
フード・マイレージは、国内輸送については計算していない。一方、国内外の輸送距離と輸送手段別の外部費用を計測しているのがフード・マイルの特徴である。近年、農水産物のトラック輸送量が増加しているが、それは、農水産物の年間を通じた常時消費を可能にし、さらに、ハウス栽培によって季節外れの消費を可能にしている。東京圏では、かぼちゃは、春先は沖縄、夏は近郊地、秋は高原、そして冬はニュージーランド等から購入するといった具合である。旬の、それも近郊地で生産された農産物を消費すればフード・マイルを減らすことが出来るのだ。フード・マイルで大切なことは、国内輸送の場合は輸入の際に利用される外航船舶ではなく貨物自動車を利用するが、自動車交通のエネルギー効率は船舶に比較して低く、さらに、都市部での貨物輸送は大気汚染、騒音・振動、交通事故などの外部費用をもたらしていることである。
フード・マイルやフード・マイレージを減らすためには、自動車交通からのモーダルシフトを進め、外部費用の少ない近郊地で収穫された農産物や近海でとれる水産物の価値を見直し、今一度、米を中心に、水産物等でたんぱく質を摂取してきた、食料自給率が高かった時代の日本の食文化を再確認し、地域ブランドの農水産物で地域活性化を促すことが必要である。
世界同時不況を脱出するためのグリーン・ニューディール経済政策が、脚光を浴びている。1929年のアメリカ合衆国における大恐慌の際、ルーズベルト大統領はダム建設などの公共事業によって総需要を拡大し、景気回復を誘導するニューディール政策を実施した。ダムや道路の建設は、その後の電力消費拡大やモータリゼーションに途を開き、大恐慌時における雇用拡大とその後の経済成長の基礎を形成した。今日のグリーン・ニューディール政策では、自然エネルギー、省エネルギーなどの地球温暖化対策に重点が置かれている。グリーン・ニューディール政策は、景気対策、雇用対策、温暖化対策、そして中期的な経済成長対策という4つの課題に同時に答えなくてはならない。
太陽光発電、風力発電、バイオ燃料などの自然エネルギーを進めるために、政府は各種の補助金を消費者や電力会社に支出するようだ。省エネルギーの分野では、グリーン税制を強化し、ハイブリッド自動車などに補助金を支給したり、鉄道などの代替交通にも財政支出をするようだ。太陽光発電では、電力会社に一定の電力量を買い上げさせる(いわゆるRPS)政策と、家庭で作られる太陽光電力を現在の電力価格より高い料金で購入させるという固定価格買取り制(いわゆるFIT制)の2つの政策がある。わが国では前者の政策が採られてきたが、今後は、現行電力料金の2倍ぐらいの価格で太陽光電力を電力会社が購入し、消費者は各種補助金を得て、約10年ほどで太陽光パネルの初期費用を回収する案が出されている。また、住宅における省エネについても、各種の補助金が考えられているようだ。
以上のようなグリーン・ニューディール政策の問題点は、財政による助成については、まず現在の財政の仕組みを変えなくてはならないということである。わが国では、電力の補助金といえば原発に限られてきたが、これらの財政資金を自然エネルギーに転換すべきだし、また、省エネに対する補助金には道路特定財源を当てるべきであろう。省エネ型自動車を増やし、道路を増やすというのでは、結局、温室効果ガスの大幅削減を困難にし、また、わが国の財政危機を一層、悪化させるであろう。
